Martinギター

インタビュー

アコースティックギターのトップブランドであるマーティン・ギターでは出荷する全てのギターにクリアトーン・コーティングを施したマーティンSPライフ・スパン弦を標準搭載している。

クリアトーンのコーティングを採用に至った経緯や、マーティンSPライフ・スパン弦の特徴などをマーティンギター/ストリングスのティム・マックネイヤー氏に聞いた。

Martin Guitar

こんにちは。私はマーティン・ギター、マーティン・ストリングスのティム・マックネイヤーです。

マーティンSPライフ・スパン弦について、お聞かせください。

我々にとって大変エキサイティングな新商品です。非常に頑丈なコア・ワイヤを持つ既存のSP弦を使用しています。とても丈夫な弦です。さらに、弦を保護し寿命を飛躍的に長くするトリートメント技術の特許を持つクリアトーンと手を組みました。これによって重たいコーティングをせずに、素晴らしいトーンを可能にしたのです。

クリアトーンとはどのようにして出会ったのですか。

私たちは弦について多くのリサーチをしました。開発にもかなりの時間を費やしました。我々独自のトリートメントを様々なコーティングで試してみました。それで実際にSP Plusというコーティング弦も発売したのです。我々は引き続き研究を続けましたが、テストの結果、クリアトーンのコーティングが、弦に対して一番軽量だったのです。そのため、出来立ての弦がそのまま、ほぼ変わりのない品質を保つことが出来るのです。弦の振動、指の感触もとてもいい状態です。コーティングしていることを感じさせないのです。とても素晴らしいと思います。

クリアトーンが(アメリカの)市場に数年間、存在していたのを知っていました。そこで我々は実際にクリアトーン弦を購入して、試してみたのです。我々は検証の結果に驚きました。我々は彼らの元に出向き、我々の弦にもコーティングをしてもらえないか聞いてみることにしました。彼らは快く受け入れてくれました。我々は実際にギターに張ってみて、数週間弾き続け、そのテスト結果に大変満足したのです。現在では、出荷する全てのマーティン・ギターにクリアトーンのコーティングを施したSP Life Span弦を使用しています。

Core Wireについてお聞かせください。

弊社のSP Life Span弦はSP Core Wireを使用しています。SP Core Wireはスチール・コアにハイテンションで巻いています。ハードに演奏し続けたとしても、数ヵ月後、まだ弦は切れません。本当に丈夫に出来ています。

現在ではいくつかのコッパー素材があります。有名なのは80/20ブロンズと92/8フォスファー・ブロンズです。コッパーを使うのもいいですし、いろんなモデルが考えられます。巻き弦に違ったタイプを使用することも出来ます。それらの組み合わせによって、弦の響きが変わってくるのです。素材の選び方によって、ブリリアントな響き具合、そしてその音質がいかに長持ちするか、が変わってきます。

我々の印象では、80/20 は新品はとてもブライトな響きですが、それが時間と共に丸くなります。フォスファー・ブロンズでは、新品の音色が、その弦を張り替えるまで、音質に変わりはないでしょう。我々はほとんどのモデルにフォスファー・ブロンズを使用しています。暖かな音質です。とても良い低音があり、高音に対するレスポンスも素晴らしいです。

クリアトーン弦と、マーティンのクリアトーン加工SPとの違いについてお聞かせください。

それぞれのメーカーが独自の方法で製造しています。まずは素材選びからです。

スチールの品質グレイド選びから、巻き弦の素材の比率まで様々です。クリアトーンは独自の素材と比率ですし、マーティンも独自に選んでいます。その後、実際に製造に入ります。そこでまず重要なのが、芯の弦に対して、どの強さで巻いていくか、ということです。これをプル・ダウン(Pull Down)と呼びます。

私の印象では、クリアトーンの方が、我々よりもタイトに巻いているようです。そのため、それぞれの弦は違った感触と音質を産むことになります。クリアトーンを選ぶ人は、クリアトーンが良いと思うでしょうし、マーティンが良いと思う人もいると思います。違いがあることは大切なことだと思います。

クリアトーンのゲージ13は、我々の13とは違うでしょう。演奏者によって、演奏の方法によって、それぞれを使い分けることでしょう。いずれにせよ、クリアトーンのトリートメントは最高のものです。

現在のコーティング弦と普通弦の市場シェア比率は?

私はアメリカ国内のことなら、お答えできます。現在、普通弦は52%から53%です。アメリカでは、販売される弦の47%から48%がコーティング弦となっています。数年前まではこのようなことはありませんでした。過去10年間でのコーティング弦の普及は目覚しいものです。明らかに、これはただの一時的な現象ではありません。消費者たちが求めているものなのです。その理由は分かります。どこに弦の交換を好んでする人がいますか。弦の交換には、平均で20-30分かかります。その間、彼らは演奏しているわけではないのです。ですので、もし弦を頻繁に交換せずに済むのであれば、それが良いに決まっています。

しかし、コーティング弦の市場での比率がそんなに変わってくるとも思えません。コーティング弦が50%以上になるのは難しいでしょう。中にはコーティング弦に悪い印象を持っている人がいますから。私たちは、そのようにコーティング弦を誤解している人たちに、是非SP Life Span弦を試していただいて、もう一度コーティング弦について考え直してもらえることを願っています。

ありがとうございました。


 
  • Progress

    レコーディングでどの弦を使用するかも重要な所ですね。